はじめに

近年、日本国内のUCIコンチネンタルチーム(UCI登録のプロチーム)が使用する機材は劇的な変化を遂げています。
特に新興ブランドのロードバイクやホイール、コンポーネントの採用が増え、従来のヨーロッパや日本の大手メーカー一辺倒だった状況から多様化が進んでいます。
この変化の背景には機材の進化やチームの経済的要因、マーケティング戦略の変化、グローバル市場の影響 などが挙げられます。
今回は近年の国内UCIチームの機材の変化と、新興ブランドが増えた要因、そして新興ブランドが増えることによるメリットについて解説します。
近年の国内UCIチームの機材の変化

出典:TRI SPORTS
かつて国内UCIチームのロードバイクはシマノ製コンポーネントを中心に、日本のANCHOR(ブリヂストン)、欧州のPINARELLO、TREK、SPECIALIZED、CANNONDALE、SCOTTなどの大手ブランドがほぼ独占していました。
しかし近年では新興ブランドの採用が増加し、以下のような傾向が見られます。
新興ブランドの増加

出典:NESTO
CEEPO、NESTO、Panasonic、CHAPTER2など、日本やアジア圏のブランドがプロチームの機材に採用される機会が増え、以前よりシェアが拡大しています。
また、Factor、Cervélo、LOOK、BMCなどの新進気鋭の欧州ブランドが、従来の伝統ブランドに取って代わる形で採用されるケースも増えています。
・国内ブランドの躍進
・新興欧州ブランドの台頭
機材のトレンド変化

出典:コルナゴ
機材のトレンドの変化には次のような傾向が見られます。
まずは軽量とエアロ性能を兼ね備えたフレーム(例:Factor OSTRO VAM、LOOK 795 Blade RS)の増加、次にリムブレーキを使うチームがゼロになり全チームがディスクブレーキ仕様を採用、そして、従来のシマノやカンパニョーロ、MAVICなどの大手ブランド中心の構成からDT Swiss、GOKISO、CADEX、TOKENなどの新興ブランドの台頭などが挙げられます。
・エアロ&オールラウンドの両立
・ディスクブレーキの完全移行
・ホイール&タイヤの多様化
新興ブランドが増えた要因と背景

経済的要因 – コストパフォーマンスの最適化
国内UCIチームはワールドツアーチームほどの潤沢な資金を持たずスポンサー契約の中で最適な機材を選択する必要があります。
大手ブランドの機材は高価であり新興ブランドはより良い条件を提示することが多いため採用が進んでいると考えられます。
✅ 一例
CEEPO(日本)
CEEPOは、軽量かつエアロ性能に優れたフレームを提供し、国内チームでの採用が増えている。
Factor(英国)
Factor は、高品質なカーボンフレームを提供しつつ、価格競争力があり、プロチームにとって魅力的な選択肢となっている。
✅ ポイント
新興ブランドはコストを抑えながら高性能な機材を提供し、チームにとって採用しやすい!
マーケティング戦略の変化 – 新興ブランドのプロモーション
新興ブランドはワールドツアーチームではなく国内コンチネンタルチームに機材を提供しブランドの認知度を向上させるという戦略を取ることが多いです。
これはワールドツアーチームへの機材供給には莫大な資金が必要なため、コストを抑えつつプロレベルの実績を積むための手段となっています。
✅ 一例
CHAPTER2(ニュージーランド)
CHAPTER2は、アジア圏のコンチネンタルチームをターゲットに機材供給を拡大。
NESTO(日本)
NESTOは、国内の実業団チームやコンチネンタルチームへの供給を強化し、知名度を高めている。
✅ ポイント
新興ブランドは国内UCIチームを「テストの場」として活用し、ブランド価値を向上!
技術の進化 – 新興ブランドでもハイエンド機材を提供可能に
カーボン成型技術や設計ノウハウの進化により、新興ブランドでも高性能なロードバイクを開発しやすくなったことも要因の一つです。
かつては大手メーカーしか作れなかった軽量かつ剛性の高いフレームも、現在ではアジア圏の新興ブランドが競争力を持つレベルに到達しています。
例えばFactor Bikes は、F1技術を応用したカーボン成型技術を採用し、BORA-hansgrohe(ワールドツアーチーム)にも採用されました。
また、CEEPO はトライアスロンで培った空力設計をロードバイクに応用し、国内チームに高評価を得ている。
✅ ポイント
新興ブランドでも大手メーカーと同等のハイエンド機材を提供できるようになった!
新興ブランドを採用するメリット

(1)コストパフォーマンスの向上
大手ブランドと比べて新興ブランドの機材は同等の性能を持ちながらより良い条件で供給を受けられるケースが多いことが挙げられます。
特に国内UCIチームのように限られた予算の中で最高のパフォーマンスを求める場合、新興ブランドの採用は合理的な選択となります。
(2)機材の柔軟なカスタマイズ
新興ブランドはチームごとのニーズに合わせてフレーム設計やコンポーネント選定の自由度が高いのも魅力の一つです。
大手ブランドでは難しいカスタムオプションが可能になるケースもあります。
(3)スポンサーシップの強化
新興ブランドは積極的にスポンサー契約を結ぶためチームの経済的支援が得やすいです。
これにより、チームの機材供給が安定し選手のパフォーマンス向上にもつながる要因にもなります。
新興ブランドを採用することでコストを抑えながら高性能な機材を手に入れより自由度の高い機材選定が可能にもなります。
まとめ

近年は国内UCIチームの機材は新興ブランドの増加とともに多様化が進んでいます。
この変化の背景には経済的な要因やマーケティング戦略の変化、技術面での進化やスポンサー契約の柔軟性などが挙げられます。
✅ 経済的な最適化(コストパフォーマンスの向上)
✅ マーケティング戦略の変化(プロモーション目的の機材提供)
✅ 技術の進化(新興ブランドでも高性能機材を開発可能)
✅ スポンサー契約の柔軟性(チームごとのカスタマイズ対応)
今後も新興ブランドの台頭が続けば日本のプロチームはさらなる競争力を持ち、機材の進化とともに世界レベルの走りを目指せる環境が整っていくでしょう。