はじめに

近年、ロードバイク市場においてエントリーモデルの価格競争が激化しています。
2025年に向けて、各メーカーが価格と性能のバランスを重視したモデルを投入し、新規ユーザーを獲得しようとしています。
この動きの背景には、材料費の変動、アジア市場での新興ブランドの台頭、そして電動アシストロードバイク(eロード)の普及など、さまざまな要因が影響しています。
エントリーモデルの価格競争が激化する背景

① グローバル市場における価格圧力
ロードバイク市場では、ヨーロッパやアメリカの老舗ブランドだけでなく、中国や台湾の新興ブランドが台頭しています。
これらのブランドは、自社工場で製造することでコストを抑えつつ、高品質なカーボンフレームやアルミフレームを採用したエントリーモデルを低価格で提供しています。
これにより、従来の有名ブランドも価格を抑えた競争力のあるモデルを投入せざるを得なくなっています。
② 製造コストの変動と新素材の導入
カーボン素材の加工技術の進歩や、新たな製造プロセスの導入により、エントリーモデルでもカーボンフレームを採用するケースが増えています。
特に、「カーボンコンポジット」や「ナノカーボン」といった新素材の導入によって、コストを抑えつつ剛性と快適性を両立したフレームが開発されています。
③ eバイク市場の拡大と影響
電動アシストロードバイク(eロード)の普及により、従来のエントリーモデルの需要が変化しています。
特に都市部では、通勤・通学用途でeバイクを選択するユーザーが増え、メーカーは通常のロードバイクとeロードのどちらに力を入れるべきかを模索しています。
そのため、競争力のある価格設定をしなければ、エントリーユーザーの獲得が難しくなっています。
価格競争の影響と各メーカーの戦略

① カーボンフレームの低価格化
以前はエントリーモデルのロードバイクといえばアルミフレームが主流でしたが、現在では30万円前後の価格帯でもカーボンフレームを採用したモデルが登場しています。
例えば、ジャイアントの「TCR Advanced」シリーズやメリダの「Scultura 4000」などは、カーボンフレームを採用しつつ、価格を抑えたモデルとして人気を集めています。
② コンポーネントの標準化
エントリーモデルでも、新型シマノ105 12速やスラムのRival AXSなどの最新コンポーネントを搭載するケースが増えています。
これは、各メーカーが最新技術を搭載したモデルを手頃な価格で提供することで、ブランドの競争力を高めようとしているためです。
③ 直販モデルの拡大
キャニオンやROSEなどの直販ブランドは、従来の店舗販売モデルに比べて中間コストを削減できるため、同じ価格帯でより高性能なバイクを提供できます。
この影響で、他のブランドもオンライン販売を強化し、エントリーユーザー向けにお得な価格設定を行うようになっています。
エントリーモデルの価格競争によるメリットとデメリット

メリット
高性能なバイクが手に入りやすくなる → 以前はミドルグレード以上でしか選べなかったカーボンフレームやディスクブレーキ搭載のモデルが、エントリーモデルでも選択可能に。
価格の透明性が向上 → オンライン直販モデルが増えたことで、定価ベースの価格競争が進み、消費者にとって分かりやすい価格設定になっている。
選択肢の拡大 → 新興ブランドの台頭により、さまざまなデザインや仕様のロードバイクを比較して購入できる。
デメリット
価格競争によるコスト削減が品質に影響する可能性 → 一部のメーカーでは、価格を抑えるためにフレームの仕上げや付属パーツの品質が低下するケースも。
ブランドの差別化が難しくなる → どのメーカーも似たようなスペック・価格帯で競争するため、差別化が難しくなり、購入の決め手が曖昧になる可能性がある。
どんなサイクリストに影響があるか?

初めてロードバイクを購入する人
→ 低価格でも高性能なバイクが手に入りやすくなり、ロードバイクを始めるハードルが下がる。
コストパフォーマンスを重視する人
→ 価格競争のおかげで、より優れたパーツ構成のバイクを予算内で購入できる可能性が高まる。
予算30万円〜40万円で本格的なバイクを探している人
→ 以前よりもこの価格帯で選べるカーボンロードバイクが増え、選択肢が豊富になる。
既存のブランドにこだわらない人
→ 新興ブランドの台頭により、従来の有名メーカーにこだわらなくても、コストパフォーマンスの良いバイクを手に入れられる。
2025年のエントリーモデル市場の展望

今後、エントリーモデルの市場はさらに競争が激化し、以下のようなトレンドが進むと考えられます。
カーボンフレームのさらなる低価格化 → 25万円〜30万円の価格帯でも、軽量なカーボンロードバイクが増加。
電子コンポーネントの普及 → 低価格帯のロードバイクにも、シマノ105 Di2やスラムRival AXSなどの電動変速システムが搭載される可能性が高まる。
オンライン直販の増加 → 店舗販売よりも、直販ブランド(キャニオン、ROSE、デカトロンなど)が市場を拡大する可能性。
エントリーモデルの多用途化 → グラベルロードやオールロードバイクの設計を取り入れた「エントリーグラベル」モデルが増える。
まとめ

2025年のロードバイク市場では、エントリーモデルの価格競争が激化し、消費者にとっては高性能なバイクをより手頃な価格で入手できるチャンスが増えています。
しかし、その一方で、価格を抑えるために品質が犠牲になるリスクや、ブランドの差別化が難しくなるという課題もあります。
ロードバイクの購入を検討する際には、単に価格だけでなく、フレーム素材、コンポーネント、メーカーのサポート体制なども考慮し、自分に最適な1台を選ぶことが重要です。