ショートクランクの普及とその影響について

近年、ロードバイクにおける「ショートクランク」の普及が加速しています。
従来は身長が低いライダーや、特定の用途に限定されていた短いクランクアーム(165mm以下)が、近年ではプロライダーを含む幅広いサイクリストに選ばれるようになっています。
2025年に向けても、各メーカーのバイクにショートクランクが標準装備されるケースが増えており、その利点と影響について詳しく見ていきます。
ショートクランクとは?

ショートクランクとは、クランクアームの長さが通常よりも短い(165mm以下の)クランクのことを指します。
一般的なクランクの長さは170mm〜175mmですが、現在では160mmや155mmといった超ショートクランクも登場しています。
ショートクランクのメリット

① ペダリング効率の向上
ショートクランクは回転半径が小さくなるため、ペダリング時の膝や股関節の可動域が減り、よりスムーズで効率的なペダリングが可能になります。
特に高ケイデンス走行時に恩恵が大きく、トルクの変動が少なくなるため、安定した出力を維持しやすくなります。
② 膝や股関節への負担軽減
クランクが短くなることで、膝や股関節の曲がり角度が小さくなり、関節にかかる負担が減少します。
これにより、長時間のライドでも疲労が溜まりにくく、関節痛のリスクを軽減する効果が期待できます。
特に、膝に痛みを抱えているサイクリストには大きなメリットとなります。
③ 空気抵抗の軽減
ショートクランクを使用すると、上死点(ペダルが最も高い位置)での膝の位置が下がり、上半身の姿勢を低く保ちやすくなります。
これにより、エアロポジションをより長時間維持しやすくなり、結果として空気抵抗の削減につながります。
④ クライミング性能の向上
短いクランクは回転半径が小さいため、ダンシング(立ち漕ぎ)時にバイクを振る動作がスムーズになります。
これにより、ヒルクライムでのバイクコントロールがしやすくなり、リズムを崩さずに登坂できるメリットがあります。
ショートクランクのデメリット

① ギア比の調整が必要になる場合がある
ショートクランクはレバレッジ(てこの原理)が弱まるため、同じ力でペダルを踏んでも、トルクが減少する傾向があります。
そのため、一部のライダーはフロントチェーンリングを大きくする(例:50-34T → 52-36T)などの調整が必要になる場合があります。
② 力強いトルクペダリングには不向き
ショートクランクは回転系のペダリングに向いている一方で、トルクをかけて踏み込むスタイルのライダーには不向きな場合があります。
特にスプリント時や、極端な急勾配でのダンシングでは、標準的なクランクの方が有利になることもあります。
プロライダーやメーカーの動向

近年、多くのプロロードレーサーがショートクランクを採用しています。
特に、2023年以降のワールドツアーでは、クライマーやオールラウンダーの選手が165mmや160mmのクランクを使用する例が増えています。
また、2025年モデルのロードバイクでは、完成車の標準クランク長が165mm〜170mmのモデルが増加傾向にあります。
主なメーカーの動向
シマノ: 新型クランクセットでは160mmの選択肢が増加
スラム: 165mmのクランクを標準搭載するモデルが増加
カンパニョーロ: プロチーム向けに160mmクランクをテスト中
どんなサイクリストにおすすめか?

✔︎ ロングライドやブルベを楽しむサイクリスト
→ 膝や股関節への負担を軽減し、長時間のライドでも快適なペダリングを維持できる。
✔︎ 高ケイデンスでのペダリングを重視するライダー
→ ショートクランクは回転系のペダリングに適しており、スムーズなペダル回しが可能。
✔︎ ヒルクライム志向のサイクリスト
→ ダンシング時のバイクコントロールがしやすくなり、登坂時のリズムを崩さずに走行できる。
✔︎ 関節への負担を減らしたいサイクリスト
→ 膝や股関節への負担を軽減できるため、過去に膝痛を経験したライダーに最適。
まとめ

ショートクランクの普及は、ロードバイクのフィッティングやペダリングスタイルに大きな変化をもたらしています。
従来の「身長に応じたクランク長の選択」という考え方から、「ライディングスタイルや体の動きに最適なクランクを選ぶ」という方向へシフトしつつあります。
2025年以降、より多くのメーカーがショートクランクを標準装備するようになり、プロ・アマ問わず幅広いライダーに選ばれる選択肢となるでしょう。
自身のライディングスタイルに合わせて最適なクランク長を選ぶことで、より快適で効率的なサイクリングが可能になります。